一陸技と一陸特の違いは?難易度・仕事・どっちを取るべきか解説
第一級陸上無線技術士(一陸技)と第一級陸上特殊無線技士(一陸特)は、どちらも無線設備の技術操作に関わる国家資格です。
名称が似ているため、「どちらが上位なのか」「仕事ではどちらが必要なのか」と迷う人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、放送局や高出力設備を含む幅広い無線設備を扱うなら一陸技、携帯電話基地局や固定無線回線など一陸特の操作範囲で足りる仕事なら一陸特が候補になります。
本記事では、一陸技と一陸特の操作範囲、試験内容・難易度、活かせる仕事の違いを比較します。
一陸技と一陸特の違い
一陸技と一陸特の主な違いは、次のとおりです。
| 比較項目 | 一陸技 | 一陸特 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 第一級陸上無線技術士 | 第一級陸上特殊無線技士 |
| 資格の区分 | 陸上無線技術士 | 陸上特殊無線技士 |
| 技術操作の範囲 | すべての無線設備。周波数・空中線電力・無線局の種類による制限なし | 30MHz以上・空中線電力500W以下の多重無線設備など、法令で定められた範囲(二陸特の操作範囲を含む) |
| 主な設備 | 放送局、固定局、基地局、無線測位局、衛星地球局など | 携帯電話基地局、固定無線回線、マイクロ波中継設備、一定の衛星通信設備など |
| 試験科目 | 無線工学の基礎、無線工学A、無線工学B、法規 | 無線工学、法規 |
| 問題数・試験時間 | 95問、2日間で合計9時間30分 | 36問、合計3時間 |
| 国家試験の実施時期 | 原則として7月・1月 | 原則として6月・10月・2月 |
| 国家試験の合格率(令和6年度) | 24.0% | 36.3% |
| 国家試験手数料 | 16,500円(2026年9月30日申請分まで)/18,800円(同年10月1日以降) | 6,300円(2026年9月30日申請分まで)/7,200円(同年10月1日以降) |
| 主な取得方法 | 国家試験(一定の資格・業務経歴がある人は認定講習課程も可) | 国家試験または養成課程 |
※合格率は、総務省が公表している令和6年度の国家試験の受験者数・合格者数をもとに、資格会議編集部が算出しています。一陸特の養成課程修了者は含みません。国家試験手数料とは別に、振込にかかる手数料が必要です。
一陸技の方が操作範囲も試験範囲も広く、一般には一陸特より難易度が高いと考えられます。ただし、資格選びでは難易度だけでなく、担当する設備がどちらの操作範囲に入るかを確認することが重要です。
操作できる無線設備が異なる
一陸技と一陸特の最も大きな違いは、技術操作を行える無線設備の範囲です。
一陸技は設備の種類や出力による制限がない一方、一陸特には周波数、空中線電力、無線局の種類などの条件があります。
一陸技はすべての無線設備を技術操作できる
一陸技を取得すると、放送局、電気通信業務用の固定局、基地局、無線測位局など、すべての無線設備について技術操作を行えます。周波数や空中線電力による制限もありません。
一陸特の範囲に含まれる携帯電話基地局や固定無線設備はもちろん、高出力の送信設備や基幹放送局の設備まで扱える点が特徴です。
ただし、一陸技の中心となる権限は、設備の調整や保守などの「技術操作」です。通話や電文の送受信に当たる「通信操作」とは区別されるため、一陸技だけですべての業務用無線の通信操作ができるわけではありません。
なお、アマチュア無線局では、第四級アマチュア無線技士の操作範囲に属する操作が認められます。

一陸特は周波数や空中線電力などに制限がある
一陸特では、固定局や基地局などに設置された多重無線設備のうち、30MHz以上の電波を使用し、空中線電力が500W以下の設備を技術操作できます。第二級・第三級陸上特殊無線技士の操作範囲も含まれます。
実務では、携帯電話基地局、固定マイクロ波回線、無線中継設備などで活用されます。また、一定の条件を満たす衛星通信設備やレーダーなども対象です。
一方、一般のテレビ・ラジオ基幹放送局の送信設備や、法令で定められた出力・周波数の範囲を超える設備は、一陸特では操作できません。ただし、受信障害対策中継放送局やコミュニティ放送局では、一部の技術操作が認められます。
代表的な設備で比べると、次のようになります。

試験内容と難易度が異なる
どちらも年齢、学歴、実務経験などの受験資格はありません。一陸特に合格していなくても、一陸技を直接受験できます。
科目数、試験時間、出題範囲のいずれも一陸技の方が大きく、受験時の負担には差があります。
一陸技は4科目を2日間で受験する
一陸技の試験は、「無線工学の基礎」「無線工学A」「無線工学B」「法規」の4科目です。科目免除がない場合は2日間で受験し、試験時間は合計9時間30分です。

無線工学では、電気回路、電子回路、送受信機、通信方式、アンテナ、電波伝搬、測定などを幅広く扱います。計算問題も多く、試験中は電卓を使用できません。
合格した科目は、試験月の翌月初日から3年以内に行われる一陸技の国家試験で、申請により免除されます。一度に4科目をそろえる方法だけでなく、複数回に分けて4科目すべての合格を目指すことも可能です。
令和6年度は5,914人が受験し、1,420人が合格、合格率は24.0%でした。ただし、科目免除を利用して受験する人もいるため、初受験者が一度で4科目すべてに合格した割合ではありません。

一陸特は無線工学と法規の2科目
一陸特の試験科目は、「無線工学」と「法規」の2科目です。無線工学24問、法規12問の計36問を、3時間で解答します。
| 科目 | 問題数 | 満点 | 合格点 |
|---|---|---|---|
| 無線工学 | 24問 | 120点 | 75点 |
| 法規 | 12問 | 60点 | 40点 |
無線工学では、多重通信設備、変調、送受信機、アンテナ、電波伝搬、測定などが問われます。一陸技より科目数と出題範囲は限られますが、用語の暗記だけでなく、計算問題への対策も必要です。
令和6年度は4,957人が受験し、1,801人が合格、合格率は36.3%で、一陸技の24.0%より12.3ポイント高い結果です。ただし、試験科目や受験者層が異なるため、合格率だけで難易度を判断することはできません。
また、一陸特は、国家試験のほか、総務大臣の認定を受けた養成課程を修了して取得する方法もあります。養成課程を履修できるのは、電気科・電気通信科の高等学校・中等教育学校などを卒業した人、または選抜試験などにより同等以上の学力があると認められた人です。
活かせる仕事が異なる
一陸技と一陸特は、どちらも通信インフラの現場で活かせます。
ただし、資格が必要になるかどうかは、会社の業種名だけでは判断できません。担当する無線設備と業務内容を確認する必要があります。
一陸技は放送局や高出力設備まで対応できる
一陸技を活かしやすい主な仕事は、次のとおりです。
- テレビ局・ラジオ局の送信設備の運用や保守
- 通信会社の固定局・基地局の運用や技術管理
- 官公庁や防災分野の無線設備の保守
- 衛星地球局や無線測位設備の運用
- 無線機器メーカーの評価、測定、品質保証
一陸特の範囲を超える設備も担当できるため、放送設備や高出力の無線設備まで選択肢に入れたい人には、一陸技が候補になります。
ただし、一陸技は法令上、無線設備を「操作」するための資格です。
メーカーの設計・開発職で知識が評価されることはありますが、すべての設計業務で一陸技が必須になるわけではありません。
一陸特は基地局工事・保守の現場で活かしやすい
一陸特を活かしやすい主な仕事は、次のとおりです。
- 携帯電話基地局の設置、調整、点検
- 固定無線回線やマイクロ波中継設備の保守
- 通信設備工事後の測定や試験
- 防災行政無線など、条件内の陸上無線設備の保守
- 一定の衛星通信設備の運用や点検
一陸特は操作範囲こそ限定されていますが、携帯電話基地局や固定無線回線など、実務で使われる設備を対象としています。応募先が一陸特を必須または歓迎条件としている場合は、取得によって資格要件を満たせる可能性があります。
一方、資格を取得するだけで、基地局工事や保守をすべて担当できるとは限りません。業務によっては、電気工事、施工管理、ネットワーク、測定器の操作、高所作業などの知識や経験も求められます。
一陸技と一陸特はどっちを取るべき?
どちらを取得するか迷った場合は、資格の難易度だけでなく、①求人や社内の資格要件→②実際に扱う設備→③資格が必要になる時期→④将来担当したい業務の順に確認します。
求人や現在の業務で必要な資格から決める
最初に確認するのは、応募先や勤務先がどの資格を求めているかです。
一陸技の方が操作範囲は広いものの、一陸特で対応できる業務に一陸技が必須とは限りません。反対に、一陸技が指定されている仕事では、一陸特だけでは資格要件を満たせません。
求人票の記載ごとの判断方法は、次のとおりです。

同じ基地局工事や設備保守でも、無線設備を技術操作する場合に必要となる資格は、設備の周波数、空中線電力、無線局の種類によって変わります。
求人票だけで判断できない場合は、採用担当者や就職・転職のエージェントへ確認することが必要です。
取得までの負担と必要な時期を比べる
一陸技は4科目を2日間で受験するのに対し、一陸特は2科目を1日で受験します。
一陸特には一定の履修要件を満たした人が利用できる養成課程もあるため、取得までの進め方にも違いがあります。
現在の仕事や内定先で一陸特が早く必要になり、その操作範囲で担当業務を行えるなら、まず一陸特を取得する方法が現実的です。一方、一陸技が最終目標で、当面の業務に一陸特が必要ない場合は、最初から一陸技を受験できます。
一陸技には科目合格による免除制度があるため、4科目を複数回に分けてそろえることも可能です。試験の難易度だけでなく、資格が必要になる時期と学習に確保できる期間を照らし合わせて判断しましょう。
将来扱いたい設備まで考える
現在の仕事が一陸特の範囲内でも、将来、基幹放送局や一陸特の制限を超える設備を担当したい場合は、一陸技を目標にする選択肢があります。
反対に、今後も携帯電話基地局や固定無線回線など、一陸特の範囲内で仕事を続ける予定なら、一陸特で必要な権限を満たせる可能性があります。
一陸特は一陸技の受験に必要な前提資格ではなく、保有していても一陸技の4科目は免除されません。そのため、必ず「一陸特から一陸技」の順に取得する必要はありません。
ただし、現在の業務で一陸特が必要な人が、先に資格を取得し、実務経験を積みながら一陸技を目指す方法には意味があります。直近の業務と将来のキャリアを分けて考え、取得する順番を決めてください。
まとめ
一陸技と一陸特の選択で避けたいのは、「範囲が広いから一陸技」「科目数が少ないから一陸特」と、資格だけを見て決めることです。業務に不要な範囲まで含む資格を選べば受験負担が増え、操作範囲が足りなければ希望する設備を担当できません。
受験前に応募候補の求人や社内の配置要件を複数確認し、求められる資格と担当設備を整理したうえで、一陸特で足りるのか、一陸技まで必要なのかを判断してください。
一陸技・一陸特は衛星地球局や衛星通信設備に関わる仕事でも活かせるため、宇宙分野への就職・転職を考えている人は、宇宙業界で役立つ資格もあわせて確認してください。

一陸技と一陸特に関するよくある質問
- 一陸技は一陸特の上位資格ですか?
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一陸技が、法令上、正式に「一陸特の上位資格」と定められているわけではありません。ただし、技術操作できる範囲は一陸技の方が広く、一陸特の操作範囲も含みます。
担当する設備が一陸特の範囲内であれば、必ずしも一陸技が必要になるわけではありません。
- 一陸技を持っていれば一陸特も取得する必要がありますか?
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一陸技は一陸特の技術操作範囲を含むため、法令上の操作範囲を広げる目的で一陸特を追加取得する必要はありません。ただし、資格手当や社内登録の対象は会社ごとに異なるため、勤務先の制度を確認してください。
- 一陸特を持っていると一陸技の試験で有利ですか?
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一陸特の学習で身につけた無線工学や法規の知識は、一陸技の学習にも活かせます。ただし、一陸技では工学の基礎、工学A、工学Bまで範囲が広がり、理論や計算も深くなります。
一陸特を持っていることだけを理由に、一陸技の試験科目が免除される制度はありません。
- 一陸技と一陸特はどちらが就職に有利ですか?
-
希望する職種によって異なります。放送局の送信設備や幅広い無線設備を扱う仕事では、一陸技が資格要件になる場合があります。携帯電話基地局や固定無線設備の工事・保守では、一陸特で条件を満たせる求人もあります。
資格名だけで判断せず、求人票の資格欄と仕事内容を確認してください。必須資格だけでなく、実務経験、専攻、電気・ネットワーク分野のスキルも採用に影響します。
参考資料
- 日本無線協会「陸上無線従事者」
- e-Gov法令検索「電波法施行令」
- e-Gov法令検索「無線従事者規則」
- 日本無線協会「無線従事者が活躍する分野」
- 日本無線協会「第一級陸上無線技術士の操作範囲」
- 日本無線協会「第一級陸上特殊無線技士の操作範囲」
- 日本無線協会「資格別・科目別試験問題数と試験時間」
- 日本無線協会「国家試験の合格基準」
- 日本無線協会「令和8年度 陸上無線技術士国家試験案内」
- 日本無線協会「令和8年度 特殊無線技士国家試験案内」
- 日本無線協会「養成課程で取得できる資格」
- 日本無線協会「国家試験手数料の改定」
- 総務省「無線従事者試験の実施結果(令和6年度)」
※操作範囲、試験日程、手数料は変更される場合があります。受験申請前に、日本無線協会と総務省の最新情報を確認してください。

